あれよあれよの内に年末です。さまざまな動きに、なにかと制限のかかる一年でした。

先日、北九州出身のメキシコオリンピックマラソン銀メダリスト、君原健二さんのこんなコラムに心惹かれました。

今でも「走ることはずっと続けて」いらっしゃる君原さんですが、「そのランニングも、景色でも見ながら楽しく走りたいところなのですが、近ごろ、そうもいかなくなってき」たのだそうです。

「というのは、健康管理のために走らなければいけない、と義務的になってきた感じがしまして。やはり、わくわくした気持ちで走りたいものです。」(朝日新聞 12月13日 おはようスポーツFUKUOKA 君原健二のRoad to 2020より)

改めて、心から楽しめることが少しずつ狭められて、しなければならないことばかりが増えたような年だったなぁと、共感しながら読みました。

そこで、せめてもの「わくわくした気持ち」を!と、今年最後のこころぐ通信は、マツモトおすすめ“クリスマスの本”でお届けいたしました。

『ゆきのまちかどに』(ケイト・ディカミロ作 バグラム・イバトーリーン絵 もりやまみやこ訳 ポプラ社)。
クリスマスの近いある夕暮れ、街かどにやってきた、さるを連れたオルガンひき。アパートからその姿を見たフランシスはお母さんに「あのひとたち、夜はどこかへ帰るの?」と聞きました。「どこかへ帰っていくでしょう。」「どこかって?」「知りませんよ。」フランシスは気になってしかたありません…。
最後の見開きでは部屋の暖かさと賑わいに包まれるような、美しい絵本です。

『子うさぎましろのお話』(文・佐々木たづ 絵・三好碩也 ポプラ社)。
一番先に、サンタ=クロースのおじいさんから贈り物をもらってしまった、白い子うさぎの“ましろ”。自分の体に炭をこすりつけて別の子うさぎになって、もう一度贈り物をもらおうと考えますが…。
50年以上読み続けられている、日本の作家さんのクリスマス絵本です。

小さなお子さんとも読める短い絵本、『くろうまブランキー』(伊東三郎 再話 堀内誠一 絵 福音館書店)。
短い文にシンプルな絵だけど、大人の方にこそオススメしたい『おくりものはナンニモナイ』(パトリック・マクドネル 谷川俊太郎 訳 あすなろ書房)。
などなど、いろいろ捨てがたいのですが、最後に、マツモトが一番ハマった作家、星新一さんの「ある夜の物語」を。

せまく粗末で殺風景な部屋。恋人もいないひとりのクリスマス・イブ。ウトウトしていた青年がはっと顔を上げると、立っていたのはサンタクロース。
「なぜぼくのところへいらっしゃったのです。」「ことしはどこを訪れようかと空をただよっていたら、さびしげなものを感じた。そこでここへ来たわけです。世の中のどこかでクリスマス・イブに一回ぐらい、奇跡が起こってもいいでしょう。」「ああ、なんとすばらしいことだろう。」「さあ、望みはなんでしょう。」
いざとなると、なかなか決められない。迷ううちに青年の心に変化がおこった。
「おくりものを受ける権利が、ぼくにあるかどうか。それが気になってきました。権利というより資格といったほうがいい。ぼくよりも、もっと気の毒な人がいるはずだ。そっちへ行ってあげたほうがいいんじゃないでしょうか。」
青年は、病気の女の子のところへ行ってあげてくれと望み、サンタクロースはその通りにした。青年は、満足だった。何が起こるかを想像し、楽しくなった。
さて、病気の女の子がサンタクロースに願ったことは…。

新潮文庫『未来いそっぷ』や『おーい でてこーい ショートショート傑作選』(星新一/作 加藤まさし/選 講談社 青い鳥文庫)で読めます。ネットにも上がっているようです。

いよいよ今年もあと数日。年末年始は寒波がやって来そうです。お身体お大切になさって、どうぞ良いお年をお迎えくださいますよう。

(文責 松本まゆみ)

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