「2月は逃げる」の言葉通り、あっという間に2月も残り少なになりましたが、節分の月ということで鬼の絵本をひとつ。
1973年に出版されてから何度も版を重ね、長く読み続けられている『島ひきおに』(山下明生・文 梶山俊夫・絵 偕成社)という絵本があります。読み終わるとしーんとしてしまうようなお話です。
海の真ん中の小さな島に住んでいる一人ぼっちの鬼。空を渡る鳥や沖を通る船を見ると「おーい、こっちゃきて あそんでいけ!」と呼ぶが誰も寄りつきはしない。鬼は毎日さびしかった。
ある嵐の晩、島にたどり着いた漁師たちは現れた鬼に肝をつぶした。
「わしは、ここに ひとりで おるのが、さびしゅうて ならん。あんたらと いっしょに くらしたいが、どうしたら ええんかのお。」と尋ねる鬼に、いくらなんでも島を持ってはこないだろうと考えて、漁師は
「あなたの 島を ひっぱってきんさったら、いっしょに くらせるでございましょうが…。」と口からでまかせを言ってしまう。
ところが鬼は「これは これは、ほんまに、ええこと おしえてもろた。」と、島を引いて海の中を歩き始める。
ようやく浜辺の村までやってくると、「おーい、島 ひっぱってきたぞ、こっちゃ きて あそんでいけ!」と呼んだ。
村人たちは相談をした。
「ほかの村へいってもらわにゃ。」
どこの村でも嘘をつかれ、あるいは酷い騙され方をし、鬼は追い払われ続ける。西の島では、ばあさまが言う。
「みなみの ほうの うみへ いけば、おにと にんげんが いっしょに くらせるところが あるそうな…。」
何年も鬼は南へと歩いて行った。島は波にけずられて消え、体は綱のようにやせ細り…。
「なんぼかむかしの はなしじゃそうな。だがいまでも おには うみのまんなかを、みなみへみなみへ ながれつづけて おるかもしれん。」
これでおしまいです。読み手は主人公に身を引きつけて読むので、初読の感想は「鬼がかわいそう…」「遊んでほしいだけなのに…」が多いでのしょうが、それは鬼がさびしいだけ、一緒に遊びたいだけだと解っているから。村人たちはそれを知りません。ただただ恐怖の対象が身近に迫るのを回避せねば、と行動するのです。いろんな読み方のできる絵本かと思います。
瀬戸内海の引島という島は鬼が引いて来たという伝説があるそうで、そちらは鬼が困難をどうにかしようとしてくれた話のようです。作者の山下明生さんは、そのお話を膨らませて『島ひきおに』を書かれたのだとか。
鬼もいろいろ。人も物もいろいろ。もしも1つのイメージだけに決めつけられているとしたら、そこには「思い込み」や「偏見」が存在するかもしれません。
1973年に出版されてから何度も版を重ね、長く読み続けられている『島ひきおに』(山下明生・文 梶山俊夫・絵 偕成社)という絵本があります。読み終わるとしーんとしてしまうようなお話です。
海の真ん中の小さな島に住んでいる一人ぼっちの鬼。空を渡る鳥や沖を通る船を見ると「おーい、こっちゃきて あそんでいけ!」と呼ぶが誰も寄りつきはしない。鬼は毎日さびしかった。
ある嵐の晩、島にたどり着いた漁師たちは現れた鬼に肝をつぶした。
「わしは、ここに ひとりで おるのが、さびしゅうて ならん。あんたらと いっしょに くらしたいが、どうしたら ええんかのお。」と尋ねる鬼に、いくらなんでも島を持ってはこないだろうと考えて、漁師は
「あなたの 島を ひっぱってきんさったら、いっしょに くらせるでございましょうが…。」と口からでまかせを言ってしまう。
ところが鬼は「これは これは、ほんまに、ええこと おしえてもろた。」と、島を引いて海の中を歩き始める。
ようやく浜辺の村までやってくると、「おーい、島 ひっぱってきたぞ、こっちゃ きて あそんでいけ!」と呼んだ。
村人たちは相談をした。
「ほかの村へいってもらわにゃ。」
どこの村でも嘘をつかれ、あるいは酷い騙され方をし、鬼は追い払われ続ける。西の島では、ばあさまが言う。
「みなみの ほうの うみへ いけば、おにと にんげんが いっしょに くらせるところが あるそうな…。」
何年も鬼は南へと歩いて行った。島は波にけずられて消え、体は綱のようにやせ細り…。
「なんぼかむかしの はなしじゃそうな。だがいまでも おには うみのまんなかを、みなみへみなみへ ながれつづけて おるかもしれん。」
これでおしまいです。読み手は主人公に身を引きつけて読むので、初読の感想は「鬼がかわいそう…」「遊んでほしいだけなのに…」が多いでのしょうが、それは鬼がさびしいだけ、一緒に遊びたいだけだと解っているから。村人たちはそれを知りません。ただただ恐怖の対象が身近に迫るのを回避せねば、と行動するのです。いろんな読み方のできる絵本かと思います。
瀬戸内海の引島という島は鬼が引いて来たという伝説があるそうで、そちらは鬼が困難をどうにかしようとしてくれた話のようです。作者の山下明生さんは、そのお話を膨らませて『島ひきおに』を書かれたのだとか。
鬼もいろいろ。人も物もいろいろ。もしも1つのイメージだけに決めつけられているとしたら、そこには「思い込み」や「偏見」が存在するかもしれません。
実は「思い込み」や「偏見」には、交流分析の「自我状態」が大きく関わっています。まずは「気づく」こと。交流分析はそのために大いに役立つ心理学です。
(文責 松本まゆみ)
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