2月ということで、鬼が出てくる昔話を1つ。「だんだん呑み」というお話です。

むかし仲の良い老夫婦がいた。ある時爺さまのお腹が痛くなったので、婆さまは寺の和尚にどうしたらいいかと尋ねた。「それは腹に虫がいるからじゃ、蛙を呑めば治る」と言われ、そうした。すると蛙が虫を食って痛いのは治ったが腹の中で蛙がはねて困った。すると、なら蛇を呑めと言われた。

次は蛇が這い回るので雉を、雉がつつくので猟師を呑めと言われた。すると鉄砲がつっぱるので鬼を呑んだが、今度は腹の中で鬼が暴れる。和尚は爺さまの口を開けさせ「鬼は外」と豆を投げ込んだ。そしたら鬼は外に飛び出てきたんだと、どんとはれ。

子ども達に語ると「蛙を呑んだ」の所で「いやー!」と声が上がりますが、最後は「あー、ね」と納得の空気で終わるお話です。

竹だの桃だのから子どもが生まれたり、動物や物がしゃべったり等など、昔話や物語では「ありえないこと」が多々起きます。それをお話のままに受け入れられるのは幼い時期ならでは。

幼い頃に理屈抜きで、私達を守ってくれる人智を超えた不思議の存在を受け入れた素地があるからこそ、大人になってもお話の持つ「生きるための力」が活きるのではないかと思います。

そしてこれは「幼児万能感」にも通じる所があるような…。いったん自分は「何でもできる存在」だと感じること、そして少しずつ(←重要です)それを手放すことで自分自身の可能性がきちんと見えるようになる。発達の段階の大事なステップの1つです。 幼い頃にもらった心の中のお宝が、どうぞ力を発揮してくれますように。 (文責 松本まゆみ) “こころぐ通信”は、こころセーフティネット協会にメールアドレスをご登録くださっている皆さまに毎月お届けしております。配信をご希望の方はメッセージ欄で、アドレスとお名前をお知らせください。協会のスケジュールやお知らせとともに、20日頃にメール配信いたします。